夫婦喧嘩は子どもにどう影響する?子どもの前で避けたいことと、見せてしまったときのフォロー
夫婦喧嘩が子どもにどう影響するかは、喧嘩をしたかどうかより、どう表し、どう終えたかで変わると、研究では整理されています。怒鳴り合いだけでなく、冷たい沈黙も対立のひとつの形です。一方で、口論が解決する場面を見た経験のある幼児は、そうでない幼児より、その後の口論での苦痛の反応が小さかったという実験もあります。この結果から編集部は、子どもを巻き込まないことと、見せてしまったときは仲直りも見せることを、現実的な対応と考えています。暴力や脅しがあるときは話が別で、早めに外部の窓口に頼ってください。この記事では、親御さんを責めずに、研究と公的な資料をもとに整理します。
夫婦喧嘩が子どもに与える影響として、研究で分かっていること
影響の鍵は、喧嘩の有無より、親が対立をどう表し、どう扱うかにあると整理されています。先に断っておくと、この記事は「喧嘩をしてはいけない」と言うものではありません。夫婦が人間である以上、意見がぶつかる日はあります。
対立の表し方と扱い方が関わる
ハロルドとセラーズによる2018年のレビュー論文(Journal of Child Psychology and Psychiatry)は、夫婦間の対立と子どもの心の健康の関係を整理しています。同論文は、近年の研究では、子どもが親の対立の表し方と扱い方に影響を受けること、その表し方は「沈黙から暴力まで」の幅広い段階にわたることが強調されていると述べています。さらに、親同士の対立が子どもの感情面、行動面、社会性、学業、将来の対人関係に悪い影響を及ぼすという新しい証拠は、親が同居していても別居していても当てはまるとしています。
子どもは「この家は安心か」を見ている
DaviesとCummingsは1994年の論文(Psychological Bulletin)で、「情緒的安全」という考え方を提案しました。子どもは夫婦の対立を前にしたとき、自分の家族の安心が保たれるかどうかを気にかけ、それが感情の調整や行動に関わり、時間をかけて長期的な適応にもつながるという仮説です。子どもが気にしているのは「この家は大丈夫か」ということが多い、と考えると分かりやすくなります。
解決する場面を見ることの意味
El-Sheikhらが1996年に発表した研究(Journal of Abnormal Child Psychology)では、4〜5歳の子どもに大人同士の口論を見せる実験を行いました。解決する口論を先に見た子どもは、解決しない口論を先に見た子どもより、その後に見た口論で、苦痛の行動が少なく、口論の結末を悪く予想する度合いも低くなりました(一部の結果は女児でのみ見られました)。
Goeke-Moreyらの2007年の研究(Journal of Family Psychology)も、夫婦喧嘩の「終わり方」に注目しています。母親102人の日記と、子ども163人の実験室での反応を調べ、妥協、謝罪、服従、合意して違いを認める、撤退といった終わり方の違いが、子どもにとって意味を持つことを示しました。喧嘩の終わり方を、子どもは見ています。ただし、これらは実験室や日記を使った研究で、家庭の事情すべてに当てはまるとは限りません。
子どもが巻き込まれる度合い
Daviesらの2015年の研究(Developmental Psychology)は、平均12.6歳の子ども263人と、平均4.6歳の幼児243人を対象に調べました。感情の反応が強い子では、夫婦の対立に深く関わるほど心理的な問題が増えやすく、反応が弱い子ではむしろ減少を予測したと報告しています。反応の強さは外から分かりにくいため、編集部は、どのお子さんにも、対立の間に立たせない形を勧めます。
子どもの前で避けたいこと
避けたいのは喧嘩そのものよりも、子どもが安心できなくなる出来事と、子どもが巻き込まれる形です。次の4つは、ここまでの研究と、後述の法律の考え方をもとに、編集部がまとめました。完璧にできなくて構いません。疲れている日に言い合いになるのは、誰にでもあります。
1. 手が出る、物に当たる、脅す
叩く、物を投げる、壊す、脅すといった行為は、子どもの前でなくても避けたいものです。子どもの前で起きると、子どもの安心を大きく揺らします。手が出そうだと感じたら、その場を離れます。すでに繰り返されているときは、後述の窓口に相談してください。
2. 人格を否定する言葉、長く続く罵り合い
児童虐待防止法は、子どもに向けた著しい暴言を心理的虐待に挙げています。夫婦の間でも、「あなたはダメな人間だ」のように人格を指す言葉は、子どもが近くにいる場面では特に避けたい言い方です。
3. 子どもを味方にする、伝言役にする
「パパとママ、どっちが悪いと思う?」と聞く、「ママに言っておいて」と伝言を頼む、といった関わり方は、子どもを対立の中に置きます。先ほどの研究でも、子どもが対立に関わる度合いが話題になっていました。
4. 冷たい沈黙を、子どもの前で続ける
声を荒らげなくても、口をきかない状態が続くと、子どもには家の空気として伝わります。ハロルドとセラーズの論文が、対立の幅を「沈黙から暴力まで」と述べている点とも重なります。沈黙が続くときは、「いまは少し離れて、あとで話すね」と時間を言って離れるだけでも、無視とは違う形で伝わります。具体的な切り出し方は夫婦喧嘩の仲直りの仕方7つで紹介しています。会話そのものが減っているときは、夫婦の会話がないのは危険信号?も参考にしてください。
「面前DV」とは。子どもの前の喧嘩は虐待になるのか
ふつうの言い争いが、そのまま虐待になるわけではありません。ただし、子どもがいる家庭での配偶者への暴力などは、法律上、子どもへの心理的虐待に当たりえます。
児童虐待防止法(平成12年法律第82号)の第2条第4号は、子どもへの著しい暴言や拒絶的な対応に加えて、「児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力」を、子どもに著しい心理的外傷を与える言動のひとつとして挙げています。ここでいう暴力は、配偶者の身体に対する不法な攻撃で生命や身体に危害を及ぼすもの、およびこれに準ずる、心身に有害な影響を及ぼす言動とされています。こども家庭庁も、心理的虐待の例として「こどもの目の前で家族に対して暴力をふるう(ドメスティックバイオレンス:DV)」を挙げています。これがいわゆる面前DVです。
個々のケースが虐待に当たるかどうかは、児童相談所などが状況を踏まえて判断します。こども家庭庁の統計でも、児童相談所が相談を受け、援助方針会議などの結果、児童虐待と判断して指導や措置を行った件数が数えられています。
こども家庭庁がまとめた令和6年度の児童相談所における児童虐待相談対応件数は、全国236か所で223,691件でした。種別では心理的虐待が133,024件で、全体の59.5%を占めます(福祉行政報告例を基に、こども家庭庁が作成)。これらは公的な相談と対応の状況を示す数字で、個々のご家庭に当てはまるかどうかを示すものではありません。
子どもの前で喧嘩してしまったあとのフォロー
見せてしまったと気づいたら、自分を責めすぎず、「ふたりは仲直りした」と子どもに伝わるようにすることが、まずできることです。ここから先は、先ほどの研究を踏まえた編集部の考えです。お子さんの年齢や性格によって、合う関わり方は異なります。
仲直りした様子を見せる
喧嘩の終わり方を子どもが見ているという研究結果から、夫婦が落ち着いたあとに、子どもの前でも普段の会話に戻る姿を見せることが、ひとつの方法になります。「さっきはごめんね」「うん、こっちこそ」といった短いやりとりで十分です。
子どもの気持ちを聞いて、「あなたのせいではない」と伝える
子どもの年齢に合わせて、「びっくりしたよね」「怖かった?」と気持ちを聞きます。そのうえで、「パパとママの話で、あなたのせいではないよ」と伝えます。話したがらない子には、無理に聞き出さなくて構いません。
夫婦の話は、子どもの目の届かない場所で
言い合いの続きが必要なときは、子どもが見ていない時間に、落ち着いてから話します。喧嘩の最中でなくても、月に一度、決まった時間にふたりで話す場を設けておくのもひとつの方法です。
言い合いになる前の気持ちを、
ひとりで書きためておく。
ふたりレンサは、日々のもやもやを自分だけのメモに書きためておけるサービスです。相手には見えません。月に一度、AIがそっと整理して、ふたりで10分話します。きつくなりがちな言葉は、AIがやわらかく整えて相手へ届けるので、子どもの前では話しにくいことを話す場として使えます。
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ひとりで抱えない
子どもの様子が気になるときや、家庭のことで迷うときは、次の窓口に相談できます。育児と夫婦関係の両方で疲れがたまっているときは、産後クライシスのセルフチェックも参考になります。
心配なときの相談先
「虐待かもしれない」「子どもの様子が心配」と思ったときは、自分で判断を下さずに、電話で相談してかまいません。児童相談所虐待対応ダイヤル「189」は、こども家庭庁によると、虐待かもと思ったときなどに、すぐに児童相談所に通告・相談ができる全国共通の電話番号です。保護者の方のSOSも対象です。
| 窓口 | 連絡先 | 内容 |
|---|---|---|
| 児童相談所虐待対応ダイヤル | 189(いちはやく) | お住まいの地域の児童相談所につながります。通話料は無料で、匿名でも相談でき、相談した人や内容の秘密は守られます。一部のIP電話はつながりません。 |
| 児童相談所相談専用ダイヤル | 0120-189-783 | 虐待の相談以外にも、こどもの福祉に関する相談を受け付けています。無料です。 |
| 24時間子供SOSダイヤル(文部科学省) | 0120-0-78310 | 子どもや保護者が、夜間・休日を含め24時間いつでも相談できます。年中無休です。 |
| DV相談ナビ | #8008(はれれば) | 最寄りの配偶者暴力相談支援センターなどにつながります。通話料がかかり、受付時間は相談先によって異なります。一部のIP電話からはつながりません。 |
| DV相談プラス | 0120-279-889 | 電話は24時間、通話料は無料です。オンラインのチャット相談もあります(12時から22時)。 |
| よりそいホットライン | 0120-279-338 | 暮らしの困りごとや悩み全般について、電話やSNS・チャットなどで相談できます。電話はフリーダイヤルです。 |
身の危険を感じるときは、ためらわず110番に連絡してください。暴力などはないものの、ふたりだけでは話が進まないときは、第三者の力を借りる選択肢もあります。一般的な夫婦カウンセリングの費用や選び方は、夫婦カウンセリングは意味ない?費用相場と行く前に試せることで解説しています。外から見えにくい距離の開き方は、仮面夫婦とはで扱っています。
よくある質問
夫婦喧嘩は、子どもに悪い影響がありますか?
研究では、影響は喧嘩の有無より、対立の表し方と扱い方に関わると整理されています。喧嘩を一度もしないことを目標にする必要はないと、編集部は考えています。口論が解決する場面を見た経験のある幼児は、その後の口論での苦痛の反応が小さかったという実験もあります。
子どもの前で夫婦喧嘩をすると、虐待になりますか?
ふつうの言い争いが、そのまま虐待になるわけではありません。児童虐待防止法は、子どもが同居する家庭での配偶者への暴力や、それに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動を、心理的虐待のひとつに含めています。個々のケースの判断は児童相談所などが行います。心配なときは、189に相談できます。
喧嘩を見せてしまったとき、子どもにどう声をかければいいですか?
編集部の考えでは、仲直りしたことを伝え、「あなたのせいではない」と添えるのが基本です。お子さんの年齢や性格によって合う言い方は変わります。様子が気になるときは、児童相談所相談専用ダイヤル(0120-189-783)などに相談してください。
相手に話し合う気がありません。ひとりでもできることはありますか?
あります。まず自分の気持ちを書き出して整理しておくと、冷静に切り出しやすくなります。ふたりレンサは、相手に見えない形で気持ちを書きためるところからひとりで始められます。
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